鶴の一声

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664 茶葉の危機

   

地元、八女市は毎年高級玉露で日本一を獲得するお茶の産地。ただ、数量的には静岡や鹿児島などの量産地には及ばない。有名なのは、山間部で栽培される手摘みの高級茶で、それも八女茶全体の1割にも及ばない。9割は、一般的に栽培されて機械摘みされる煎茶と、ペットボトルなどの原料となる2番、3番茶。

その全国的に最も生産され、庶民が生活の中で飲用する中級の煎茶の売れ行きが、ここ数年で大幅に落ちている。原因は、もちろん若い人が、コーヒーなどを好み、お茶を飲まなくなったことだが、それも急須に茶葉を入れて飲むことが、より少なくなっている。

昔は、会議などでも、ちゃんと湯呑にお茶をついで配ったものだが、今は殆どがペットボトルのお茶。また、嫁ぐ前の修養とされてきた茶道、華道をする人も少なくなった。

お茶は、育て方や、時期から区別して、葉に覆いをかけて葉を軟らかく甘く育て、手摘みして作る玉露。それを臼で引く抹茶。また、煎茶でも、最初に摘む1番茶から、摘んだ後に出てくる2番茶、3番茶まであり、ペットボトルに使われるのは、この2番3番茶。品質も低くなるので、もちろん価格も安い。生産農家は、一般に急須で飲まれる1番茶が売れないと、ペット用では赤字となる。因みに、抹茶と粉茶はよく混同されるが、全く別物。粉茶は、普通の茶葉を粉にしたもので、安価なので、業務用など多方面に使われている。

お茶の葉は、摘み取られて、製茶工場で煎られて乾燥させられ、荒茶となる。これを更に同じように揉んで精製し製品にするが、乾燥して冷蔵庫に保管すれば、何年も保管できる。これが裏目に出ることもあり、売れないものは、とりあえず保管するので、それが積み重なると、お茶の場合、かなり高額な在庫となる。

茶葉は、製品化すると、もとの重量の1割程度になるので、㎏200円の生葉は経費別でも2000円ということになる。実際はコストがかかるので、最低でも倍の4000円、1トンの在庫でも400万円。仲買などは普通に10トン以上は在庫をしているが、それが近年、販売不振で相場が下がり、大きな含み損となっているとのこと。私の知人には、仕入れ時1億円の原価が、今は2000万円相当になったという人もいる。そうなると、仲買は生産者価格を下げざるえなくなる。

小売店は、仕入れ価格が下がっても、小売価格は変わらないので、ちゃんと売れれば儲かるのだが、このように消費が減少してくれば、小売りと言えども徐々に厳しくなっていくだろう。これは、社会現象、生活様式の変化だから、生産者や業者では起死回生の方策はない。前述のように、粉茶やペーストにして菓子類などに応用するものも出ているが、それも下級茶利用が多く、そもそも、その程度の量では受給バランスの緩和には及ばないようだ。

殆どの永年農作物が、ブームを迎えては生産が増えて、やがて衰退していく。みかん、りんご、キウイ、びわ、柿、例外なく。

ペットボトルの茶、液体ミルク、即席麺、レトルト乳児食などなど、便利なものが次々に出てくるが、その便利さの代わりに、何かが失われていく。

 - 雑記

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