鶴の一声

靏繁樹が日々考えたことや思いついたことを徒然とかきます

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大連

   

 近年、地方では労働力不足が加速している。若者は大都市に集中し、残った高齢者は年を重ねるだけ。地方は高齢者が働きやすい環境にはあり、頑張ってもらってはいるが、70歳まで頑張れても、71歳で急に体調を崩すというように、身体はある時期を境に急に弱ることが多い。
 地方や人手のかかる労働力不足を緩和するために編み出されたのが、外国人研修生制度。
建前は、日本の高い技術を習得して、母国の発展に生かすというものだが、実態は、発展途上国の厳しい生活を脱するためにお金を稼ぎたい研修生と、人手不足で工場が立ち行かなくなっている日本の産業の利害が一致した制度。
 その母国も、外貨収入として恩恵を受けている。
日本は、ブラジルの2世3世など、例外的なものを除いて、外国人の労働者受け入れを禁じているから、あくまでも技術研修。
 だから、業種も限られ、期間も3年、ちゃんと日本語の基礎を勉強し、受け入れ機関と受け入れ企業と宿泊施設が完備されているので、事故が少ないという、それはそれで、三方四方にいい制度なのだ。
 そういうわけで、当社も、この制度の創生期に受け入れ開始して、既に十数年になり、その選考に大連は何度も訪れているが、行くたびに年が膨張している。
 
 今回は、ほとんどの行くべき所は行ったので、面接が終わった午後の時間を利用して、新しい開発途中の地区に行くことにした。
 丁度、次の週にダボス会議が開催されるという、大連中心部から東に行った港湾地区。
中国と言う国は、とにかく日本と比べると、なんでも規模が違う。会議場に行く道路は緊急に花が植栽され、新築された近代的なデザインの会議場の周りには、高層ホテルがポコポコ建っている。
 少し離れた海岸沿いにも、高層マンションが立ち並び、まだ続々と建設中。
ところが、現地の友人の話では、現在建っているマンションの下は、埋め立て工事がずさんで地盤沈下が進み、マンションが傾き始めたため、入る人が無いと言う。それでも、その傍で新築が進む。
 これが中国ですよと中国人が笑い飛ばす。
中国人は、我々が思っていることを十分わかっている。しかし、政府のやることだと言う。違った意味の政経分離(笑)政民分離とも言える。

 また、中国の特徴で、都市部に立派な高層マンションが立ち並ぶ一方で、ちょっと路地裏に入ると、老朽化した小部屋の密集したアパートが立ち並ぶ。方やマンション価格3000~5000万円、方や家賃5000円。
 現在建設中の殆どが、その高価格帯。一棟で200世帯くらいのマンションが、一度に50棟くらい建つ。その新規分だけで2人暮らしとしても2万人分になる。そんなのが大連だけでも、あちこちに且つ、継続的に出来ている。一人っ子政策で、人口減少が予想される中、誰が入るのか。
 現地の人は、人が住まないマンションと言って笑う。

 ところで、中国の研修生も、一人っ子で若者が減ってきたことに合わせ、経済も発展し所得水準も上がったことで、若い人の応募が減り、お母さんの応募が多くなった。
 子供の将来の教育の為と、まだ2~3歳の子供を自分の母や義母に預けて、3年間頑張る。日本ではちょっと考えられないこと。日本は格差の少ない、本当に豊かな国なのだ。

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