鶴の一声

靏繁樹が日々考えたことや思いついたことを徒然とかきます

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途中帰国

   

 わが社に研修に来ていた研修生の女の子が今日、途中帰国した。
1年8か月を研修し、1年と4か月を残しての無念の帰国だった。
 彼女は、中国の吉林省の極寒の田舎町の貧しい家に生まれ、両親のためにと日本に研修に来ていた。
お母さんは元々病弱で、今回、胸の病気が悪化し、重ねてお父さんが怪我をしてしまった。
 お父さんは、再婚で子供がいたのだが、再婚を機に父息子の仲が悪くなり、息子は既に家庭を持ち、交流が無くなっているので、自分が帰らないと、両親の世話をする人がいないという。
 研修生の中でも一番評価が高く、仕事も熱心だったので、我が社としてもとても残念。
一度、帰って暫く世話をして、旅費は全て会社で負担するので、落ち着いたら帰って来ないかと言ったのだが、両親が心配で、傍についていたいと言う。
 私が、そのことを話に行くと、紙を取り出して「孝」という字を書いて見せた。
彼女は、自分にとって、これが一番大事だと言う。
 つまり、親に孝を尽くすという意味だ。
当然、途中帰国で自分の夢も崩れ、帰れば帰ったで、収入も大幅に減り、これからも厳しい生活が待ち受けるはず。

 中国は、近年目を見張る経済発展を遂げ、上海・北京・大連と巨大都市に近代的な高層ビルが立ち並ぶ。
世界あちこちにクルーズ船で乗り付け、買い物三昧。
 国や企業は、世界の企業や不動産、資源を買収している。
しかし、それは、沿岸部や大都市のほんの一部であって、地方では、まだまだ貧しい人達がたくさんいる。都市部を一歩出ると、それは全く違う世界。
 北朝鮮の二極化と同じ風景が中国にもある。
中国は共産主義と言うけれど、それは土地が売買できない、国有企業が存在するくらいで、実態は日本より極端な資本主義だ。

 彼女は、日本語作文コンクールでも入賞しているし、会社でも優秀勤務賞を受けるなどの本当に真面目で勤勉な子だった。
 日本の若い子が無くしつつあるものを、そういう貧しい、家族が寄り添って生きるような環境だからこそ、まだ持ち続けているのだろうが、彼女が彼女のそういう生き方が報われて幸せになることを祈るだけである。
 
 

 - 社会, 雑記

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