鶴の一声

靏繁樹が日々考えたことや思いついたことを徒然とかきます

*

551 最後の合唱

   

 出張中に、男声合唱団のグループラインで、団員のホスピス入院を知らせてきた。
ホスピスというのは、ご承知だと思うが、末期がん患者が、手術出来ない状況で、最後を安楽に迎えるための施設。前にも合唱団慰安で、ブログで紹介したことがあると思う。
 薬で、痛みをほとんど抑えるので、患者さんに苦痛苦悩の表情は無く、施設も明るく、置いてある書籍も、心を安らげる本や宗教、悟りの本。
 
 そのホスピスに、今年の6月まで一緒に慰問に参加していた彼、彼と言っても、私よりずっと年上なのだが、合唱団では私が先輩。その彼がホスピスに入院したという。
 ホスピスに入院すると、平均的に2~3週間の命と思っていい。
入院する患者は、意識ははっきりしているので、本人も分かっていて、覚悟の上の入院ということになる。だから書籍も、そのような最後を迎えるための本が揃っている。

 その彼が、ご家族を通じて、最後に仲間の合唱団の歌を聞きたいとの希望だと言う。
昨日の日曜、地元の合唱祭が行われるので、その練習と本番の合間に、みんなで行こうということになった。幸いその病院は隣の市にあり、車で行って、本番に歌う歌を中心に30分ほど歌って、それから帰っても十分に間に合う。
 彼は、一度前に入院して、退院した後、元気な様子で練習に出て来ていたが、その後、またちょっと具合が悪いので休むと言っていたが、こんなに急変しているとは思いもよらなかった。
 長身で、社交ダンスの先生もしていて、中々ダンディな紳士だったが、ホスピスで横たわる彼は、驚くほど細くなり、青白くなっていた。
 前もって、病院にお願いして、ホールを貸し切って、ベットを移してもらい、18人がベッドを取り囲むようにして、みんなで歌ったが、声の出ない口を、一緒に歌うかのように動かした。
 目は、開いているが、もう瞳は動かない。
私は、涙もろい方なので、歌いながら、涙がこぼれ落ちる。
 奥さんと娘さんが、喜んでくれて、本番のためのコサージュを作ってくれていた。
翌日、団員間ラインで、彼が亡くなったと言う知らせが届いた。
 昨日の今日だ。彼の意識のある内に間に合って良かったと思った。

 死は、誰にも訪れる。
交通事故で死んだり、病気や怪我で死ぬこともあれば、老いて死ぬ人もある。
 老衰などで分からなくなって死んだり、事故などで急死したりする場合は別として、病気で死ぬ場合は、長い時間、死の恐怖や痛みを味わうことになる。
 慰問や、今回のことで、ホスピスを知るようになり、若ければ、痛みを伴っても、手術するなどの努力を重ねるべきだろうが、年老いて不治の病が見つかった時、苦しみながら逝くよりも、私だったら、このような施設で、絵でも描きながら、心穏やかに死を迎えたいと思った。

 また、孤独に亡くなる人もいれば、友人家族に看取られて亡くなる人もいる。
それは、その人の生き方による。
 どんなに強気でいても、逝く時の気持ちは、その時にならないと分からないものだ。
 

 - 雑記

  関連記事

鶴の一声
659 犬猫貿易
鶴の一声
625 対日貿易赤字
鶴の一声
718 個展
鶴の一声
703 即位礼正殿の儀
鶴の一声
816 第44回結婚記念日
鶴の一声
745 初夏の気温
鶴の一声
776 自粛解除後のコロナ
鶴の一声
746 季節の中で
鶴の一声
526 暑中雑感
鶴の一声
785 災害ボランティア