鶴の一声

靏繁樹が日々考えたことや思いついたことを徒然とかきます

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613 表彰ということ

   

 毎年、株式会社クマヒラという会社から、ロータリークラブに、「抜粋のつづり」という小冊子が送られてくる。
 これは、この会社の創始者である故熊平源蔵氏が、社会貢献のためにと、昭和6年に創刊し、今なお無償配布を続けられているもので、素晴らしい社会貢献である。
 その中で、最初に読んだ「表彰ということ」という投稿に、思わず目頭が熱くなった。公開は故人の遺志にも合うと思うので、ブログでも紹介させて頂くことにした。以下原文のまま。

 以前、ある雑誌に恵まれない境遇にいる人を紹介する連載記事を書いた時のことである。
毎月、福祉施設に5千円のお金を35年間も送り続けているという女性がいるということで会いに行った。
 8畳1間の木造アパートに住み、新聞配達をしている70歳の女性は、ぼくの取材をかたくなに拒むのを、やっとお願いした。
 彼女は、2歳の時に母親が病死、施設にあずけられる。
他の子にいじめられ、かばってくれる職員のやさしさが身に沁みたという。中学を出て働いた紡績工場で20歳の時に、工場の男性と結婚、7年間で3人の女の子が生まれるが、彼女が30歳の時に夫は結核で死亡。彼女は夫の僅かな退職金で、道端でリヤカーを店にしてネクタイを売るようになった。
 上の子は小学生、あとの2人はリヤカーの横で遊ばせる。
ネクタイは、1日に1本くらいしか売れなかった。
 ある時、中年の女性が来て、「これタイ焼きだから、子供さんに」と差し出され、涙がほとばしった。
 ある冬の雪の日、2人のこどもが空腹と寒さで泣きわめいているとき、初老の紳士が来て、ネクタイを2本も買ってくれた。彼の身なりから、とても彼女が売っている安物のネクタイを身に付ける人とは思えなかったという。彼は一言も喋らず釣銭もとらずに立ち去った。

 間もなく、彼女は疲労で倒れ、市役所に行き、医療費の助成を頼んだが、規則で金は出せないと言われた。しかし、その職員は、自分用の牛乳を1本持たせてくれて「力不足でごめん」とあやまったそうだ。
 彼女は、露店をやめて、新聞配達をはじめる。高校へ行った上の子が、夜は食堂の茶碗洗いのアルバイトをして2人の妹の世話をした。
 ある日、新聞で、親のいない子の施設が経営難と知り、彼女は即座に5千円を送った。名前は伏せた。
 家族4人の生活は苦しかったが、自分を助けてくれた人々のことを思うと、苦しいなんて言っていられなかった。
 35年間の毎月の送金が知れ、市が表彰したいと言ってきたとき、彼女はきっぱり辞退した。「私は昔、ある人からタイ焼きを頂いた時決心したんです。1つの手は自分と家族のために、もう1つの手は人様のために使おうと。私のしたことなんか、たいしたことはない。表彰するなら、私に牛乳をくれた人やネクタイを買ってくれた人を表彰してください」
 彼女の言葉に、ぼくは絶句して天を仰いだ。

以上です。
 お金が有り余っている連中が、たくさん居るのに、更に儲けようと投資はしても、人助けに金は出さない。更に、自分の欲のために、人を利用したり騙したりという話が多い中に、人間捨てたものでは無いと思うし、思わせてくれる、心洗われる1冊である。
 我々ロータリークラブも、幾分かの支援はしているつもりだったが、この女性には遠く及ばない。金額ではなく気持ち。この女性の5千円は、ゴーンさんや孫正義だったら幾らに匹敵するだろう。
 

 - 信念, 社会

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